やっと一人で商談もできるようになってきた頃、トラブルは突然起こった。
調子よくこの日も一人で1台売った。
翌日、シフト制で僕は休みだったがプライベートの携帯がなった。
出勤しているマネージャーからである。
マネ『お前が昨日売ったお客さんから電話が入ってるよ、なんか注文書で納得いかないところがあると。ちょっといますぐ行ってこいよ』
『え、まじっすか?わかりました。すぐ行きます!』
これが休日出勤か。。社会人って感じだなあ。。
しかもこの日は偶然にも自分の買った新車がお店に届く日。
『自分の車なのに最悪の納車日だ』と軽い絶望に浸った後すぐに用意し、会社に寄って書類を一通り持って自分の新車で慣らし運転もクソもないくらいのスピードでお客さんのところに向かった。
お客さんの勘違い!?しかし新人が故に。。
客『この注文書のところのココ、これおかしくない?計算が合わないんだけど』
『いや、これはパソコンで自動計算されているはずなんで合わないはずはないんですが。。』
客『じゃあ納得いくように説明してよ!』
しかし僕はお客さんが納得出来る説明がで来なかった。
客『これさあ、もうキャンセルしてもいいよね?』
『いや、それだけは!!ちょっとだけ上司と電話させてください』
上司に電話して説明するとすぐにお客さんの勘違いだということを教えてくれた。
しかしそれまで僕はそれがお客さんの勘違いだということに気づかなかった。
客『なるほどそういうことね、うーん、でも君のせいで勘違いしたんだよ!まあ君も新人だから仕方ないね。』
『すいませんでしたっ!(ざっけんなマジで)』
この日を境に僕はもっと細かいところまで勉強するようになった。
失敗とは最高の勉強材料である。
あれ?車を売るのが怖いぞ?
しかし逆に今までのざっくりした商談ができなくなった。
トラブルを恐れ守りに入った説明ばかりするめんどくさい営業マンになってしまった。
当然トラブルは良くないことだが、これを恐れることによりだんだん車が『売りたくない』とすら思うようになってきた。
『あ〜この人に売ったらこんなこと言われそうだな〜』とか勝手に悪いトラブルが起こる前提で考えてしまい、できれば買わないでくれとすら心の中で願うようになっていた。
マネージャーに即バレる
マネ『お前最近客を選んでるだろ』
『え?そんなつもりはありません!(やべ、バレとる)』
マネ『別に誰だって通る道だからわかるよ。お前が最初バカスカ車が売れたのはなんでかわかるか?』
『いや、わからないです』
マネ『新人はまだ客を選ぶ”目”がないから売れるんだ』
『はぁ、、』
『お前はだんだん客を選ぶ目になってきてるんだよ、こいつは買わなそーとかこいつはめんどくさそうとか、まあ成長の証なんだけどな。』
『確かに言われてみればそーかもです』
マネ『いいか、営業は客を選んだら売れないぞ、初心に帰れ!』
『はい、頑張ります!』
やっぱり自然と選んでしまう。。
その後も客を選ばないようにと嫌な客でも必死に売ろうと努力した。
でもどっかでやっぱり『買わないように商談してる』自分がいる。
頭の中では『選ぶな、選ぶな』と思っているのに口がそれを実行してくれない。
当然成績にも反映されてくるようになった。
店長『なんだお前最近売れないな。最初の調子はどうした』
『はい、頑張ります』
店長『頑張りますはいいからさっさと売ってこいやあ!!』
『は、はい!』
週末で店長の機嫌もすこぶる悪い。
しかしその後もなかなか売れなかった。
選ぶな選ぶな勢いで行け!あれ?売れたぞ!
トラブルがあって以来、かなりビビった商談をしているのかなかなか売れない。
そんな時、また売りたくない感じの客が来店。
ちょっと喋るとなおさら売りたくないパターンの人だとわかる。
しかしまたここで買わないように商談して帰しては意味がない。あーもう捨て身だ!ガツガツいってしまえ!!
なんとすぐ売れた。
これが正しいとでも言わんばかりのタイミングだ。
え?ガツガツ相手の気持ち考えないくらいの方が売れちゃうの?それってどうなの?
自分の中でこれを否定するための言い訳を考えたがやっぱり売れたので否定できない。
本当はトラブルやその後の付き合いを考えると売りたくないけどこれが売れる方法だと思うととてつもないジレンマを感じた。
あれ、なんか目指していた営業と違うような。。これじゃ営業ってなかなかの苦行じゃね?
この時初めて”ちょっとだけ”カーディーラー営業”を選んで後悔した瞬間だった。