スポーツ用品関係の営業として、生まれ故郷の町を走り回っていた私。高校時代から夢見ていた職業に就けたことで、入社当初は毎日がウキウキしていました。
好きなスポーツ用品に囲まれ、メーカーや問屋の人たちとの会話も、勉強とは言え楽しいもので、慣れるまでは本当にいい思いばかりしていました。
しかし、少しずつ慣れてきた頃から、「果たして自分は営業に向いているのか?」と疑問に思うような場面に、少しずつ気づき始めてしまいました。
基本、お客様から注文をもらい、商品を発注。入荷したら伝票を発行し、お客様の元へ納品に行く、という、基本的な営業ルート。
もちろん、複数個所の得意先を回るので、それだけ荷物も多くなりますが、必ずと言っていいほど、何かしらを忘れ物しているのです。
出発前にどれだけ確認しても。忘れ物を発見するたびに「俺、何やってるんだ???」と自分に腹を立てていました。
また、お客様からの問い合わせにはっきりとした答えを出せないで、しどろもどろになったり。
自分としてはまともな答えを言ったつもりが「話にならん」と一蹴され、「お前が来ても用はない。もう来るな」と、自信を失う一言も言われました。
もちろん、頻繁にこういう事があったわけではありませんが、一つのミスが自分にとって、とても大きなダメージに感じていました。
「せっかく好きな業界の好きな仕事をしてるはずなのに、楽しくなくなってきてる。変だなぁ・・・。」と思い、何とか改善しようと思いましたが、いい方向へはいかず。
モヤモヤしているときに、今のカミさんと交際がスタートしました。
転職のきっかけ
そもそも、営業職としてのセンスがないと感じてきていた私は、他の業種への興味が湧いていました。
「営業は向いていない。でも、今の会社では営業しかできないから、会社を辞めて、違う職種に就こう」と思い始めました。
そして、「できれば大きな会社に」と考えました。というのも、交際していた彼女との結婚を考えており、
今まで勤めていた会社では、何かあったときに何も保障がないからです。
自営業のような家族経営の会社だったので、年金も国民年金、健康保険も役所の国民健康保険、失業保険はなく、
労災などの社会保障は一切ありませんでした。何せ社長と専務、専務の奥様と私とパートのおばちゃん5人で切り盛りする小さな会社でしたので、
そういったものはなかったのです。
「好きな業界だったから」という理由でその辺のことを何も考えず入社した私もいけませんでしたが、今思えばなかなか厳しい条件でした。
給料も手取りで高卒並みでしたから、これでは結婚もできません。これが転職に拍車をかけました。
そして、会社には内緒で、転職活動を進めていきました。
転職決定、そして、新しい会社へ
夏の終わり頃から少しずつ転職活動を始めていきました。転職サイトに登録し、日々送られてくる情報に目を通し、
週に1回発売される転職情報誌も欠かさず購入し、どんな職種を応募しているか細かくチェック。
その中でも、スポーツ業界に絡む会社で、工場勤務の応募欄を見かけました。「これだ!」と思い、早速メール。
面接の日がどうしても平日しか設定できないといわれたので、休日出勤の代休と仮病を使って何とか面接に充てました。
晴れて採用決定となり、年明けから働いてほしい旨を言われ、了承しました。これが9月の半ばくらいでした。
少なくとも退社する3ヶ月前には会社へ退社の意思を伝えるというのが一般論だったので、すぐに退社意思を上司に告げました。
それから退社するまでの間は、とっても気が重く、社長もたいそう私のそれらの動向が気に入らなかったようで、とても円満退社とは言えませんでした。
年明け後、新しい会社では工場内の品質管理の仕事に就き、営業とは違う動きに最初は戸惑いましたが、
得意先とコンタクトを取らなくていい開放感から、工場で懸命に働きました。すると、上司や営業部から褒められることが多く、
一緒に働くパートさんからも良くしてもらい、とても楽しい工場勤務ライフを送ることができました。
もちろん、上司や周りの先輩のおかげですが、こう考えると「俺、営業よりもこういう地道な仕事の方が向いてるのかな?」と感じてしまいました。
給料面は正直、変わりませんでしたが他の社会保険の面ではバッチリ。安心して作業に打ち込めました。
同僚にも恵まれ、本当に楽しい社会人生活を送りました。
その後
実はその会社も退社しまして。
彼女と正式に結婚することになり、彼女の実家の家業を告ぐ決意をしたからです。
結婚に伴い、引越しと再び転職。今は衣料品関係の小売店で働いています。
結果こうなりましたが、あの時の転職は決して間違ってはなかったと思っていますし、勉強になったと思っています。
転職もタイミングが難しいですし、全てがいい方向で転職というのは理想論です。
決して理想通りにいくとは限りませんので、転職希望をしている方は、多少の覚悟はしていた方がいいかもしれません。