何事も”初めて”ばかりの入社1年目も間もなく終わりを迎えようとした3月末。
一人の先輩スタッフの異動が決まった。
かなりのベテラン営業スタッフで管理客(抱えているお客さん)も500件以上ある。
その先輩はもう営業ではなく、部署ごと変わるのでこの管理客を全て残されたスタッフで引き継がなければならない。
そして僕のいる店舗はベテランスタッフが多かったので管理客の少ない若手二人(僕含め)で振り分けるということになった。
4月からいきなり250件自分のお客さんが増えるのだ。
これでもっともっと売れる!
異動する先輩には悪いが正直喜んだ。
それは先輩が嫌いとかではなく、単純に管理客が増えるということにである。
どこの営業の世界でもそうだと思うが、管理客にアタックするのと新規開拓では圧倒的に新規開拓の方が大変である。
というか今の時代、カーディーラーは訪問販売などはやらないので実質新規開拓などはできない。
そんな中で管理客の少ない新人ができる唯一の営業活動は『一度来店したけど買わなかった飛び込み客』をしつこくフォローするしかないのだ。
そんな状況下での250件の管理客はとんでもなく嬉しかった。
まず自動的に点検・整備等のサービス売り上げ成績が上がる。
そしてカーディーラー営業の一番スタンダードな売り方『管理客台替』ができるのだ。
トップセールスともなると新規のお客さんに売ったりすることは少ない。
今ある管理客をコツコツアタックして代替させて回していくので安定して毎月売れる。
他の同期は当然まだこんなことはない。
一気に差をつけられるぞ!と意気込んだ。
まずは引継の挨拶、みんないい人だ。
お客さんの振り分けも終わり、250件分の顧客リストが出来上がった。
そしてこの一軒一軒全てに電話して引継の挨拶をしなければならない。
これからしばらく電話の日々が始まるのだ。
店長には『三日以内にやれ!』と言われたが、なんせ普段の業務をこなしながらなのでかなりの時間がかかった。
全てのお客さんにかけるのに10日くらいを要した。
もちろん全員が全員出るわけではないのであくまでかけただけである。
接触できなかった分はまたかけなければいけない。
しかしこの電話は全然嫌ではなかった。
なぜならお客さんがみんないい人だからである。
先輩がこまめにフォローしていたのだろう。
リストに名前だけが残っているようなもう疎遠になっている客というのも普通は少なからずいる。
前の担当の名前を出してもピンと来ていなかったりとか。
しかしこの先輩のお客さんはほとんどそれがない。
こう言うお客さんを『生きた客』なんて言ったりもする。
『生きた客』は代替もしやすいので期待に胸が膨らんだ。
車検予約・保険更新・色々忙しくなってきた!
自分で売ったお客さんは管理客といえどまだまだ保険の更新もなく点検も少ない。
車検なんかは当然ない。
しかし管理客が途中から増えたことによってこれらの業務がかなり増えた。
おかげで毎日大忙しの日々である。
しかし仕事は忙しいくらいが時間もあっという間で充実感も感じられる。
この忙しさは心地よくてすごく楽しかった。
僕は2年目にして『ベテラン営業マン』並に忙しく働く、なんとも順調な社会人になっていた。