営業という仕事は、「モノ」と「ヒト」を売る仕事だと私は思います。「モノ」は当然自社の商品であり、「ヒト」は営業マンである自分自身です。自社の商品がとても優れていて、ここでしか買うことができないというモノであれば、「モノ」を売ることに重点を置けばよいですが、逆にその商品がどこにでもあるようなモノであり、他と比べても優位性が少ないモノであれば、それを買ってもらうには自分自身という「ヒト」を売るしかありません。私が前職で行ってきた営業は、「ヒト」を売るほうが比重は大きかったと思います。
私が行ってきた営業
私は前職は地方のテレビ局に勤めていました。営業部に配属され、主にテレビコマーシャルの放送枠を販売、もしくは広告代理店に提案し、販売してもらうという営業をしていました。ただ、テレビコマーシャルだけで売るのではなく、テレビ番組やイベント等の企画と組み合わせるなど、それぞれのスポンサーのニーズに合わせた企画を創り提案するため、多少は営業マンの企画力、発想力にかかっている部分はあります。しかし、根底にあるのは、自分という人間をどれだけ買ってもらっているかだと思います。夜は日々接待を繰り返し、休日はゴルフに付き合う、そんな営業でした。様々な企画を創り提案しても、そのスポンサー、もしくは広告代理店と仲良くしている営業マンには勝てない、毎回ゴルフに誘われている営業マンには絶対に勝てないという思いでした。それも含めて営業の技術であるというのは確かにそうだと思います。「ヒト」という自分自身を売ることが得意な営業マンと、そうではない営業マンがおり、だからこそ営業には向き不向きがあるのだと思います、私はこのような「ヒト」を売る営業は向いていないと、営業を始めて約6年目で気付き、転職することを決意しました。
現在の仕事
現在、私は公務員として日々事務的な仕事をしています。事務的とは言っても人とは関わる仕事であり、これまでの営業の経験も活かせているのではないかと思います。営業の仕事は決して悪いことばかりではありません。むしろ、営業に向いていて充実した仕事をしている人からすれば、今の私の仕事はつまらないと思うかもしれません。でも、私は転職して本当に良かったと思っています。家族と過ごす時間は格段に増え、休日に仕事の電話が入ることはなく、ほとんどのことがその日その日でリセットされ、毎日に気持ちの余裕ができたと思います。そして何より、自分に素直に生きていける気がします。営業をしていた頃は、営業マンという仮面を被り、演じていたのだと思います。何を優先したいのか、今の自分は本当の自分なのか、そして将来ずっとこのままでよいのかということを考え、それはちょっと違うなと思ったときが、転職のひとつのきっかけになるのではないかと思います。私が転職を決意したのは30歳のときです。転職を決意したら、自分が思う、ぎりぎりのラインまでは妥協しないこと、諦めないことが大切であると思いました。