自分がなくなってしまった保険営業時代
私は以前は生命保険会社で法人担当の営業として働いていました。具体的には、担当の企業さんに出向き、企業で働く社員の方々向けに保険を提案したり、相談に乗ったり、手続きを行ったりと、法人営業といっても、ほぼ個人対応で、一般の保険外交官と同じような業務内容でした。
既存契約者様への必要な手続き対応等はもちろんのこと、新規の契約ノルマがあり、本当に休む暇がないほど、忙しかったです。また保険商品を扱うための試験や社内教育のための講習など、テキストを読み込んで学習し、合格しなければいけない試験も年に何度もありました。
契約ノルマだけではなく、保険外交官の新規獲得までノルマがありました。そのため、友人や先輩後輩など、とにかくプライベートでも人とのつながりを持ち、誰かが仕事を探していると聞けば、保険外交員を勧めて、会社の講習を受けてみないかと積極的に勧誘していました。
そんな日々を5年ほど続けたのですが、ある時、急に仕事が嫌になったんです。
保険の法人営業を始めてから、しっかり休む時間もなく、仕事でもプライベートでも、常に周りに気を配り、誰からも信頼される親切な人であり続けなければならないと自分を律していました。家族にすら、自分の嫌な部分を見せられなくなっていたんです。それが、ふと自分の心の疲れすら見えなくなっていたほど、頑張っていい人を演じている自分に気がついてしまったんです。
このままではダメだと思いました。自分の人生なのに、自分がどこにもいないと感じたんです。その後、すぐに転職を決めました。
転職を決めて、自分と向き合う事に。
私は大学の4年間、ずっと同じ居酒屋でアルバイトをしていました。長くアルバイトをしていたので、バイトリーダーも任されていました。
就職活動をしていた時には、その居酒屋で正社員にならないかと誘われた事もあったんです。お店で働くのは楽しくて、正社員への誘いはありがたかったのですが、当時はオフィスでスーツを着て働きたいという気持ちが強く、お断りしました。
転職を考え始めてから、あの時どうして変なこだわりを持っていたんだろうと考えるようになりました。
当時の私はまだ世間知らずで、自分が毎日どんな仕事をしたいかよりも、どこで、どんな服を着て働くか、イメージや憧れでしか仕事を選んでいませんでした。
そこで、大学4年間、楽しみながら働けていた飲食業に転職する事を決めたのです。
仕事を楽しめると、自分が好きになり、前向きになる
その後、転職活動を行い、飲食店の正社員として働き始めました。アルバイトの経験があったので、仕事を覚えるのは簡単でした。
またアルバイトさんの立場に立って、働きやすい職場づくりを心がけ、1年後には店長としてお店を任せられるようになりました。
営業で培った、「どうしたら人に喜んでもらえるか」「何をどのタイミングで言ったら心を開いてもらえるか」を考える共感力は、飲食店で店長として働いている今、自分の強みとして活かせています。
転職する前は、周りの人に気を使ってばかりの自分が嫌でたまらなかったけど、今は、気配り・気遣いの力というのは、仲間を作る力だと思っていますし、ずっと前向きに考えられるようになり、毎日楽しく充実しています。
自分が嫌だと思ったあの時、転職して良かったと心から思っています。