新卒で入社して半年が過ぎようとした頃、立て続けにトラブルが起こった。
ディーラー側が悪いトラブルならまだ納得できるが、客が悪くてもこっちが悪いみたいな形で終わらせる事に違和感と苛立ちを感じていた。
確かに事を荒立てればめんどくさい。
謝って解決させた方が楽かもしれない。
でもはっきり言ってお客様は『神様』ではない。
少なくとも僕はそういう客にはそうは思えなかった。
そんな感じでトラブル続きな仕事に嫌気がさし始めた頃、少しづつ『俺、ここで一生やってけるかなぁ』なんて考えるようになってきた。
同期もみんな同じだった
休みの前の日に同期で飲み会を開いた。
話を聞けばやはり皆同じらしい。
今までは見えなかったトラブルがたくさん見えてきて、『営業ってこんなに謝るのが仕事だっけ?』みたいな。
確かに僕ももっと年中客が喜んでくれているのがカーディーラー営業かと思ってた。
実際は半分くらい、、いや、最近はトラブルの方が多いかなって感じだった。
そんな中、同期の一人が言った。
同期『俺、先輩とかマネージャーみたいになりたくねえなあ』
僕『どゆこと?』
同期『あんなに毎日目が回るくらい忙しく夜遅くまで働きたくねえ!!』
僕『確かになりたくねえ!!』
同期『まあ俺らがマネージャークラスになる頃にはもう少しマシになってるかな』
僕『だといいね』
そこにはもう新卒のフレッシュ感ややる気はなかった。
でもやっぱり売れると嬉しい
トラブルが多いから車売りたくねーなーなんてどっかで思ってるけどやっぱり売れると嬉しかった。
それは店長や先輩スタッフに賞賛されるからだ。
そしてパソコンで全店舗のスタッフの順位として成績は表示される。
なのであいつが売っていてあいつは売れないとか一目瞭然なのだ。
僕は新人の中では常に1位だった。
だから売れるとさらに同期を引き離して、3年次くらいの先輩スタッフも抜き始めていた。
『売れっ子新人』なんて呼ばれるようにもなっていた。
カーディーラー営業はこの売れた時の喜びと成績をモチベーションに続けるしかない。
トラブルがあっても売れれば気分はそれなりに帳消しになっていた。
だからとにかく売り続けなければいけない
自分のモチベーションを下げないためにも、売り続けるしか道はなかった。
もう完全にやる気が無く、”終わって”いる50代くらいの営業もいる。
しかしこうなってしまうと店長からの扱いもひどくて目も当てられない。
逆に言えばやる気が無くても50代まで営業として残っていられるようなスタッフはそんな扱いとか全然平気なんだろう。
普通なら居づらくてとっくにやめてる。
ある意味尊敬した。
しかし僕にはあのような生き方は無理だ。
メンタルがもたない。
『あいつは使えないカスだ』と思われながら給料をもらえるほど図太くないのだ。
だから売り続けるしかない。
どうせなら売って売って売りまくってトップ営業になってやる!
まだこの時はそう思えた。