研修も終わり、店舗配属となって数日が経った。
お店の雰囲気にも慣れてきて、歓迎会もやってもらった。
歓迎会では『じゃあ気合いの一気だな!』と言われ、煽られた。
本当にまだこんなのがあるんだなーとか思ったけど幸い僕は酒は弱くない。
中ジョッキをぐいーっと飲み干すと、店長は嬉しそうな顔をしていた。
僕ははっきり言って上司にかわいがられるのが得意だ。
こんなこと言うと可愛げがないが、自分の可愛いところをわかっている。
ビジュアルの話じゃない、行動だ。
そうやってアルバイトもやってのけて色々得してきた。
やはりみんなから好かれて損はないだろう。
2杯目の中ジョッキを飲み干したところで僕の挨拶は終わった。
早く売りたい!焦る新人達
まだ新人で車を売った奴は一人もいなかった。
配属されて10日もたっていないから当然だ。
だからこそみんな我先にと早く売りたかった。
しかし車を売るというのはそう簡単ではない。
というかそもそも商談すらしていない。
新人が商談できるチャンスはただ一つ。
『フリーの来店』だ。
基本的に先輩達は管理客に買い替えを勧め、車を売っている。
しかし新人にはそのアタックする管理客がいない。
つまりフラッとお店に来た客以外は商談ができないのだ。
平日はほぼフリーの来店何度こないので土日が勝負。
土日は試乗だの何だのって結構客は来る。
しかしフリーの来店客は先輩達に取られてしまう。だから僕の仕事はお茶出しだ。
しかしチャンスは突然やってきた。
激アツHOT客来店!
先輩『おい!新人!ちょっとフリーの店頭きたんだけどみんな手一杯で誰も相手できないからお前相手しろ!』
『えっ!あっ!はい!い、いきます!』
自分の父親くらいの年だろうか。
みたところ50代半ばのどこにでもいそうな普通のおじさん。
僕『いらっしゃいませ!何かお探しのお車ありますか?』
客『実は他でこの車の見積もりを取っていて、、他店の見積書も持ってきたんだけど、ちょっと見積もりを作ってくれないかな。』
僕『えっ!あ、はい!(え、いきなり商談とかできねーよまじかよ!)』
すぐにマネージャーに報告する。
マネ『それ激アツだな!間違いなく今日買うよ!よし!俺が商談ついてあげよう!』
僕『お願いします!』
それからマネージャーに同席してもらい商談はスタートした。
マネージャーは早速客が持ってきた他店の見積書と同じ内容の見積書を作ってもう値段の話をしている。
速い、速すぎる。
そしてあっという間に契約となった。
え?もう終わり?
まじかよ!
そんなこんなで僕はただマネージャーの隣に座って適当なタイミングで相槌打っていただけで車が売れてしまった。
人生初の1台目。
同期で1番目の1台目。
マネ『よかったな!1台目!おめでとう!』
僕『ありがとうございます!でもおめでとうって僕何もしてないですよ!』
マネ『でも君が捕まえたんだから君のお客さんだ。これから良いお付き合いをするんだよ!』
僕『ありがとうございます!(捕まえてもいねー)』
全くもって僕は何もしていないが、嬉しさのあまりすぐに親と彼女に『売れた!』ってメールした。