ある職場での出来事
これは、私がある職場で実際に見た事例です。
そこは、東海地方の繊維関係の中小企業でした。私は、その会社にコンピュータシステムを導入する仕事をしていました。
あるとき、その会社のオフィスを訪問して驚きました。その会社の年配の社員たちが、血相を変えて激論中だったからです。
その人たちの声高な会話が、いやおうなく耳に入ってきました。
「結婚式に呼ばれても、誰も出席しないからな。」
そんな大声が聞こえてました。ふてくされたような、それでいて泣き声のような声でした。
しばらくして事情がわかってきました。
その職場の若い女子社員が結婚退職したというのです。
それだけならめでたいお話ですが。ことはそう単純ではありませんでした。
その部署には数人のメンバーがいました。年配の社員の中にその若い女子社員だけが、紅一点としていたわけです。
そして、実際に仕事をしているのはその若い女子社員だけだったのです。
年配の社員たちは、仕事をしないというより、できない人たちだした。彼らの会話から、そのことがまるわかりでした。
「来年まで何故待てないんだ。来年になったら新しいのが来る。そのあとでもいいだろう。」
憤慨しているような、泣き言を言っているような声が、いつまでも続いていました。
何故こんな職場ができたのでしょうか
例にあげた会社のお話をどう思いましたか。心あたりのある人も多いのではないでしょうか。
現在の社会では、職場にコンピュータがあるのは当たり前です。インターネットもスマホも使っていないほうがおかしいというほどです。
しかし、コンピュータなどまったくわからない、使えないという人も決して珍しくはありません。言うまでもなく、年配の人にそれが多いわけです。
例にあげた会社では、コンピュータのシステム部門が、そういうITを使えない人の吹き溜まりになってしまったのです。
奇妙な話ですが、システム部門にコンピュータを使えない人が集まってしまったのです。他の部署からはじき出された人が、なりゆきでシステム部門に集まってしまったということです。
こういう吹き溜まりが、会社の中にできてしまうというのは、決して珍しい話ではありません。特に地方の同族会社などでは、それが顕著です。
何故かと言えば、そのおおもとは採用活動にあります。地縁、血縁といったいわゆるコネによって採用活動が行われます。
そもそも、能力も人格も採用活動とは関係ないのです。そうして採用された人が、年とともに会社の不良債権になっていくのはやむをえないのです。
職場でのあなたのポジションは
さて、自分のこととして、この結婚退職した女子社員のことを考えてください。
この人の職場でのポジションはどんなものだったのでしょうか。
この職場にとって必要不可欠の人材だったことは間違いありません。この人ひとりの力で仕事はまわっていたわけです。
他の年配の社員は、この人のおかげで会社にいられたとも言えます。しかし、この人に対して感謝していたでしょうか。
決してそうではないでしょう。むしろ、バカにするような態度を取っていたでしょう。
他の社員から見れば、娘か孫のような年齢の女子社員です。
無能な人ほど意味もなくえばりたがるものです。また、この場合は自分たちが仕事ができないことへのコンプレックスもあったでしょう。
この女子社員の結婚退職というのも、実は他の年配の社員への意趣返しという意味があったのでしょう。
ここで考えてほしいのは、本当にこの女子社員が必要不可欠の人材だったのかということです。
実は、この部署自体が会社にとって盲腸のようなものなのです。この女子社員は自分の置かれている立場の馬鹿馬鹿しさと惨めさに気づいてしまったのでしょう。
そうは言っても、年配の社員たちは定年まで会社に居座り続けるでしょう。また、それが可能な会社でもあるのです。
それでは、この職場で唯一働いている女子社員はどうでしょうか。
年配の社員たちの発言から類推すると、新人が来さえすれば、この社員は不要なのです。要するに使い捨ての消耗品なのです。
唯一会社に貢献している社員が冷遇され、寄生虫のような社員が絶対安全な場所で他人を非難している。
このような職場にいるのならば、転職を考えたほうがよいでしょう。また、考えざるをえないでしょう。
何故ならば、職場でのあなたのポジションはいわゆる便利屋であり、使い捨ての消耗品なのです。たとえ、あなたがそう望んでも今の職場で働き続けることはできないのです。
現在の職場に怒りを感じるならば、自己研鑽を積んで自分の価値を高め、次のキャリアを目指すべきです。